住民税は、別名で都道府県民税・市町村民税とも呼ばれています。
毎年5~6月頃にお住まいの自治体から、お勤め先の会社や直接納税義務者あてに『納税通知書』が送られます。きっと見たことありますよね??
私が地方公務員時代に税務課で働いていた際には、その通知を送るために税額を計算したり、実際に発送したりしていました。
今回は、皆さんの手元に届く住民税の納税通知書は、どんな過程で発送されているのか、私の税務課時代の経験から紹介させていただきます。
「勝手に送り付けてきやがって!」と思うかもしれませんが、その裏には職員の汗と涙の努力が隠れています。
ぜひ最後までご覧ください。
結論
結論から申し上げると、納税通知書が納税義務者の手元に届くまでは以下の流れとなります。
①収入の把握
②収入に基づく税額の計算
③計算結果を納税通知書に印刷
④印刷した納税通知書を封入
⑤納税義務者の元へ発送
次からより詳しく流れを見ていきましょう。
どうやって収入を把握しているのか
皆さんの支払っている住民税は、お住まいの自治体の税務課が、収入を基に計算しています。
ではどうやって収入を把握しているのか?についてですが、基本的には以下のとおりです。
①勤務先の会社から送られてくる『給与支払報告書』
②日本年金機構等から送られてくる『公的年金等支払報告書』
③納税者が税務署や自宅のパソコン等から提出した『確定申告書』
④納税者がお住まいの自治体で提出した『住民税申告書』
この他に、株などで得た配当所得、土地や建物を売買して得た譲渡所得なども、関与している事業者等から税務課に情報提供される仕組みになっています。
要するに皆さんの収入は、お住まいの自治体の税務課にすべて把握されていると思ってください。
副業もしているけど、申告しなければバレないだろうし、この収入はこのまま黙っておけばいいや!
なんて人もいるかもしれませんが、仮に副業の収入等を自己申告しなくても、勤務先の事業者等から税務課に情報提供されていれば、住民税の計算には含まれます。
また、本当にバレずにその場を乗り切ったとしても、後から収入が発覚した場合には、過去に遡って課税され、さらには上乗せされて徴収されることもあります。
私が税務課に勤めているときにも、実際にありました。何百万円と納税することになった人もいます。
これについては別記事で紹介したいと思います。
届いた収入の情報を基にシステムで計算
税務課に送られてきた給与支払報告書や公的年金等支払報告書等の情報は、税額計算用のシステムに取り込まれます。
このシステムが非常に優秀で、情報を取り込んだ後は、収入や控除の金額を基に税額を自動計算してくれます。
このとき税務課職員がすることといえば、主に情報の取り込みと、取り込んだ情報のエラーチェックです。
情報の取り込みは、データで提出された場合はデータを取り込むし、紙で提出された場合は紙の情報を手入力で取り込みます。
紙を手入力するのは非常に時間が掛かるので、本当にやめていただきたかったです。ピーク時には日をまたいで作業することもありました...
エラーチェックは、上記で取り込まれた情報が、自動計算により導き出された結果と一致しなかった場合(例えば生命保険料の支払額に対して控除額が多いまたは少ない、収入金額に対して所得金額が多いまたは少ない場合等)に、正しい金額を確認して修正する作業です。
税務課職員時代には、こちらも非常に苦労しました。
納税通知書の作成
納税者の収入等を基に税額の計算が終わったら、『納税通知書』を作成します。
作成方法としては、システムで計算した税額情報を、空白の納税通知書に印字して打ち出します。
自治体によっては、税額等の情報をすべて事業者に預けて、印字が済んだ納税通知書を納品してもらう方法をとっているところもあります。
私のいた自治体は小規模だったこともあり、税務課職員が納税通知書の作成業務を行っていました。
2~3日ほどプリンターの前にへばりついて印字作業を行います。用紙が無くなったら補充したり、紙詰まりが起きたら停止して紙を取り除いたり、なかなか根気のいる作業でした。
できあがった納税通知書を封入していく
納税通知書の作成が終わったら、あとは封入して発送するのみ!!!
こちらの封入業務は、それこそ果てしない時間が掛かるため、お手伝いさんを雇ってお願いしていました。
納税通知書を畳んで封筒に入れるという単純な作業ですが、入れ間違えは許されないし、途中で税額が変更となって差し替える可能性もあるため、打ち出した順番を崩さないようにしなければいけません。
こちらもなかなか根気のいる作業です。
なお、お手伝いさんたちは個人情報を目にすることとなりますが、これについては雇用する段階で守秘義務が課せられているので、外部に漏れるような心配はありません。
封入が終わったらいよいよ発送
封入を終えたらいよいよ発送です。
課税からエラーチェック、印刷、封入と、ここまでくると我が子のような愛しさまで湧いてきます。
ただし、発送まで気を抜くことは許されません。
なぜなら発送直前に税額が変更となったり、転出や引っ越しで住所が変わってしまったりする人もいるからです。
それらをかいくぐって、やっと郵便局に受け渡しが済んだところで、課税業務の一連の流れが終わります。
襲い掛かる住民からの問い合わせラッシュ
納税通知書の発送も終わり、ほっとできるのもつかの間。
次は、手元に納税通知書が届いた住民からの問い合わせラッシュが始まります。
申告したはずなのに、その情報が反映されてないんだけど!
去年よりも税額高くなってるんだけど、どうして?
納税通知書の見方が分からないから教えて
などなど。課税業務よりも、この問い合わせ対応の方が大変です。
説明して理解してくれる方ならいいのですが、ときには「こんなに高いお金払えないよ!てか払わないからね!」という逆ギレに近い問い合わせもあります。
相手に理解してもらうためにも、なぜそういう税額になるのか、これは誰よりも理解していなければいけません。
仕事とはいえ、このとき税金の知識をちゃんとつけることができて、本当に良かったなと思います。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、納税通知書が皆さんの手元に届くまでの一連の流れについて紹介させていただきました。
どうやって送られているのか、その背景を少しでも知ってもらうことで、「税務課の人ががんばって作ってくれたから納めるか」と少しでも前向きな気持ちで納税をしていただけたら嬉しいです。
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